燦々と輝く太陽の下で、気がつくと彼は一人だった。思えばいつもそうだった気がする。彼の語りはしばしば独りよがりだった。そこにどうして彼以外の人が入ってくる余地があるのか、周囲の人からは疑問に思われていた。
風に煽られながら、いや、おそらく天候に関わらず、彼はそこに立ち続けていた。道行く人々は様々な反応を示した。ある時は軽く挨拶を交わし、ある時は鼻で笑い、またある時は罵倒することもあった。それでもそこから動くことはなかった。
なぜ一人でいるのだろうか。それは当然ながら、一人でそこにいるからか?それとも彼の語りが独りよがりだからなのか?ある時、私は彼に声をかけてみた。
「おはよう。」
「おはようございます。」
「どうしていつも、一人でここに立っているんだ?」
「ここが私の立ち位置だからです。」
「立ち位置?なんだそれは?」
「ここに居ざるをえない、そんな場所です。」
抽象的な答えだったので、私は困惑した。
「ずっと一人で?寂しくないのか?」
「寂しい時も多いですよ。ここにいると多くの人は無視して行きます。時々軽く挨拶を交わす時もありますが、会話に至るまでは少ないですから。」
「じゃあ動けばいいじゃないか?」
「ここから動いてしまったら、見えるものが見えなくなります。これまで私に話しかけてくれた人にも、会えなくなるじゃないですか。ずっとここにいるから、話せる人に出会えるのです。」
わけがわからなかった。そんなに話したい人がいるならば、会いに行けば良いではないか?
「ここでしか会えない人がいるのか?想い人でも待っているのか?」
「私がここに立っているのは、ここに立たされているからにすぎません。ですが、いかにここに立つのか?は私の裁量でしょう。ここに立ち続けるということが私の立ち方であります。そして、そうです。ここに立ち続けているのは、想い人を待っているからです。」
「そうか。彼女には会えそうか?」
「わかりません。私の本分は、ここに立ち続けることです。」
「そうか。会えるといいな。」
私はそう言って、彼の顔を見ることなく、そこから離れた。彼は軽く会釈をして、そこに立ち続けた。風に吹かれたからか、日照りのなかで地面に写し出された互いの影が少し、それぞれ揺らいだ気がした。

コメント