暗闇のソコ

寓話・哲学短編

そこでは何もかもが偽りであり、矛盾していた。私が愛だと思っていたものは嫌悪であり、嫌悪だと思っていたものは思いやりであり、思いやりだと思っていたものは憎しみだった。表に出ればそこは裏の世界であり、裏に引っ込めば全てが晒されるような世界だった。

私は暗闇のなかにいた。少なくとも、私はそう思っていた。辺りには黒々とした光が燦然と輝き、その光は周囲の者にとっては眩しかったようだ。

あるとき、私は光のあるところに行こうと思った。黒々とした光は光ではない。白き輝きを伴って放たれるものこそが光である、それが私の信条だった。しかし、そこは暗闇である。白き光がどこにあるのか、方角がわからない。いや、そもそも白き光を私はどこで見たのだろうか。それを見ずに白き輝きが真の光だなどということはできないではないか。しかし、確かにそれは私の中にあったのだ。

私は暗闇の場を離れようとした。方角がわからなくても、がむしゃらに動いてみれば、なんとかなるかもしれない。試しに動いてみた。すると周囲から呻くような声が聞こえた。私が動くたびに黒光りする輝きがちらついて眩しさが増すらしい。動くのをやめろという声だった。そのとき、私は気づいた。

私は暗闇にいるのではなく、暗闇自身だった。私は絶望した。黒々とした輝きを放っていたのは、私自身だった。

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