複雑さと単純さ

余白・抽象

真に単純なものがあるとして、単純さは複雑さを内包せず、ただそれを引き寄せる。複雑さは単純さを内包せず、ただこれを破壊する。複雑さとは様々な関係の絡み合い、またそのように並べられることである。一方で真の単純さとは並べられることのない、つまり比類することのないものと言い換えられる。真に単純なものがあるとして、複雑さにとって、それは並べることのできる余白があるものといえる。そうして単純さが並べられるとき、その単純さは失われるということだ。では複雑さを持つ我々人間がそれに引き寄せられるとき、人はそれを破壊することしかできないのだろうか。真に単純なものを単純なものとしては、触れることができないように思える。そうだとしたら、真に単純なものに望もうとするとき、後ろめたさを感じることは必然のようにも思える。それでも真に単純なものがその単純さを覗かせることはあるように思う。複雑さは単純さを破壊するが、それは単純なもの自体を破壊することとは別ではないのか。様々な関係が絡み合うなかで、それらの関係と関係にズレが生じるとき、それは垣間見えることがあるのかもしれない。関係と関係のズレとは各関係間の差異であり、その差異とは単純なものの単純さそのものを示すことがあるのではないか。単純さに触れようと望むことがあるならば、ただ並べるのではなく、もの自体を破壊するのでもなく、並べることでできる各関係間の差異を注視する方がよいように思う。だがこのように書くと、並べることでできる各関係間の差異とは、単にまた別の関係を示しているということにすぎないといえる。単純なものの単純さに、そこに関係することのできる余白があるということは、別の関係を示すということと同義ではないともいえる。

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