一人で熱心に何かに打ち込むこと。誰かと一緒に同じときを過ごすこと。人それぞれ様々な過ごし方というものがある。思い出の持ち方というものがある。これまでに10代や20代、30代と異なる年代を過ごしてきて思うのは、同じことをしていても、その年代にしか味わえない思い出があるということだ。
誰かと一緒に映画を見に行ったり、テーマパークに遊びに行ったり……たとえば、これらのことを10代なら10代、20代なら20代の仲間と経験して思い出を作ることと、30代に30代の仲間と経験して思い出を作るということには、まったく異なる経験、そして思い出の質の違いがある。
これらの違いに優劣はない。30代で持つ経験が10代に劣るとか、優れているということではない。10代ならはっちゃけてだとか、30代なら大人の楽しみが、などということには限らず、いかに過ごすのかという過ごし方の違いがある。またそれ以上に、その年代の仲間内でしか作りえない、その年代特有の思い出の質というものがあるのだ。
私が10代や20代の頃は、特に人付き合いというものに強い興味を示すことがなかった。ただ興味がなかっただけでなく、私の場合は苦手意識があった。人付き合いというものが苦手であり、ここでは書ききれない特殊な事情もあった。いろいろと珍妙なことが起きて、その可能性も皆無だったと今でも思う。しかし、それを考慮しても、やはりもう少し、様々な思い出を持つ努力をすべきだったとも思う。そのくらい、この思い出の質の違いというものには絶大な価値があるものなのだ。
おそらく私のように苦手意識を持つ者もいるだろう。様々な事情を抱えていることもあるだろう。そんなことを言っても無理なものは無理だと思っている者もいるかもしれない。特に10代の頃は学校社会が人生の大部分を占めており、学校という場に拘束されていることが多い。そのため、人生における視野が狭くなる傾向がある為に、そのように思ってしまうこともある。現在続いている状態がこの先も続くのではないかという疑念を抱く者もいるかもしれない。
過ぎ去ったときを憂いても仕方がない。10代や20代にしかできないことがあるならば、30代でしか味わえない思い出というものもあるだろう。それは30代、40代、50代と年代が上がっていっても、おそらく変わらないだろうと思う。それでも10代や20代と、それより上の年代の違いには歴然としたものがある。
いささか唐突かもしれないが、今の10代や20代の方々に、特にそのことを強く申し上げたいと思った次第である。どんなに小さなことでも良い。今、その瞬間、その時でしか作れない思い出というものを大切にしてほしいと思う。

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