風に吹かれて

幻想・不思議

考え事をしていたからだろうか。気づいたら俺は風に吹かれて、吹かれるままに公園の道を歩いていた。どのくらい進んだだろうか。時には走り、時にはスキップし、また時にはアン、ドゥ、トロワ!などとステップを踏みながら、ただひたすらに進み続けた。

すると風の勢いが少し弱まった。そのおかげか、一羽のカラスが目に入った。木の枝にとまって、こちらを見つめているのだ。俺はなぜだか身の危険を感じた。
「あの人、カラスを見つめているよ!」
通りすがりの少年が俺をからかっていた。彼の母親は口を酸っぱくして、少年を𠮟りつけた。

「下手な口を利かないで!関わらないの!」

俺が視線を枝に戻すと、カラスは飛び立っていた。
その時、風がさらに強く吹いた。風の吹いてきた方を振り向くと、俺は顔を殴られたかのようだった。転ぶまいと踏ん張りながら、さらに進まざるを得なかった。

風は容赦なく背中を押した。まるで止まることは許さないかのように、またあるいは足を躓かせる気なのだろうか。これ以上進むなというかのように。俺は躓くのが怖かった。地面に叩きつけられかねないからだ。必死に足をばたつかせて、とにかく足を前に出し、地面を蹴った。

どのくらい進んだだろうか。いつの間にか、公園を出ていた。ふらふらになりながら辺りを見回すと、そこは川沿いの散歩道だった。向かい側から自転車に乗った若い女性が走ってきた。俺はつい期待して、その女性の脚を見た。彼女が履いているのはジーンズだった。絶望してうなだれると前のめりになり、転びそうになりながら前へ進んだ。女性はすれ違いざまに勝ち誇ったかのように鼻で笑った。なぜかしらん、俺は途端に元気になった。

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